ウィーン芸術週間からの委嘱により、チェルフィッチュ/岡田利規と藤倉大が初めてコラボレートし、”新たな音楽劇”の創出に挑む。ウィーンでの初演ののち、ヨーロッパツアーを経て、2024年には日本公演も予定。
演劇と音楽、それぞれの分野で挑戦的な創作を続け、近年特にその活躍が目覚ましい二人が、ついに邂逅。これまで領域横断的なコラボレーションを数多く重ねている岡田と藤倉による共同作業では、両者の“コラボ力”が本領発揮され、これまでの音楽劇やオペラのように演劇と音楽のどちらかが主役となるようなものではない、演劇の上演でもあり音楽の演奏会でもある、まだ見ぬ新たなものを生み出そうとしている。岡田のテキストと藤倉の音楽、俳優の演技と演奏者の演奏、それらが舞台上に対等な関係で同時に現れるとき、観客の目前には一体何が立ち上がるのか……。
本作では、チェルフィッチュの俳優陣6名と、世界トップレベルの現代音楽アンサンブルのクラングフォルム・ウィーンの演奏者7名によって、作品が紡がれる。住む家をいきなり追い出されそうになる家族の物語から始まるが、その家自体が人智の及ばない強大な力によって跡形もなくなることによって、その問題は解決される。そして、人間の世界の外側に広がる圧倒的な存在が上演を支配し、まったく新しい世界が舞台上に立ち現れる。
チェルフィッチュの旧作『消しゴム山』に続き人間中心主義から逸脱した世界を描く本作。前回は美術家・彫刻家の金氏徹平とともに人とモノの新たな関係性を探求したが、今回は藤倉とともに演劇と音楽の新しい関係を生み出すことに取り組む。
岡田利規コメント
藤倉大さんの音楽はとにかく強くて美しい。それと共存、併存する演劇を、このプロダクションでは作り上げようとしています。それはおのずと、圧倒的に新しいありようの音楽劇になるでしょう。
圧倒的に新しいありよう、とはおそらく、音楽と身体表現の関係やバランスのありようが圧倒的に新しいということです。
音楽と劇とを新しい関係、新しいバランスのもとに併置したこの、まもなく作られる代物は、音楽劇、という呼称では明らかにまかないきれてない、なにかとんでもない代物と、きっとなるでしょう。このような大それた野心を持ってクリエーションに取り組みます。
藤倉大コメント
この作品では、音楽と演劇が対等にある音楽劇を、岡田利規さんと目指して作った。音楽と演劇が対等にある、というのはどういう事なのだろうか。
僕は今まで、映画の為の音楽を、映画方面から頼まれては、デモを作曲した時点で「音楽が強すぎる」と言われて、クビになることばかりだった。ところが岡田さんとは、いつも平和に、静かに、そして、オープンに、完全なるコラボレーションができた。映画をクビにされた経験のある僕は、「これって音楽強すぎますか?」など最初は岡田さんに聞いたものだったが、岡田さんは「そんなことは絶対にあり得ないので、藤倉さんが良いと思う音楽を作ってください」という後押しをされた。岡田さんも、「音楽がこう来るのか、だったら台本は、、、演出はこういう感じで試してみよう!」など、Zoomで役者さん達の演技を見ながらリアルタイムで、僕のスタジオで作られる音楽と同時に、何十回というワークショップを一緒に重ねてテキストを書かれたと思う。僕も、音楽が演技をコントロールするようなことは一切しないように心がけて音楽を作っていった。
音楽が完全支配するオペラとは、全く違う。それでいて、いつも映像の召し使い、みたいな映画音楽とも絶対的に違う。全く新しい、視覚と聴覚の融合による物語の語り方を発見できたと思う。
こうしてコラボレーションで作られた新しい舞台音楽、そしてその楽譜。それらが、役者さん達と演奏家達とのパフォーマンスで、どう化学反応を起こすか、今から楽しみだ。
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●ウィーン芸術週間について
毎年5〜6月にオーストリアの首都・ウィーンで開催されるヨーロッパ最大級の芸術祭、ウィーン芸術週間。世界中の演劇、ダンス、オペラなどの様々な芸術作品が集められ上演されている。
ウィーン芸術週間はこれまで、現代音楽アンサンブルのクラングフォルム・ウィーンとのコラボレーション企画として、フランスを代表する演出家・ビジュアルアーティストのフィリップ・ケーヌや、世界的な注目を集める振付家マレーネ・モンテイロ・フレイタスなどに新作を委嘱してきた。2023年はチェルフィッチュが選ばれ、藤倉大とのコラボレーションの実現へと至った。
ウェブサイト https://www.festwochen.at
クリストフ・スラフマイルダー (ウィーン芸術週間芸術監督)からのコメント
岡田利規と長年にわたり協働してきた者として、彼の類稀なる劇作や演出の様式が新しい音楽とどのように対話を始めるのか、目撃するのを楽しみにしています。特に興味をそそられるのは、リズムや沈黙、音の揺らぎといった特徴的な要素を、身体や言葉、発話に取り入れる岡田の作品が、密接なコラボレーションを通じて書かれた楽譜と組み合わさったときに、どのような相互作用を起こすかについてです。この点を念頭に、岡田に藤倉大を紹介しました。藤倉は、岡田と同じ世代を代表する日本の作曲家の一人です。音楽の伝統的な側面を大切にしながら、実験的なアプローチにも積極的な藤倉は、先駆的な芸術ビジョンを持つ岡田にとって理想的な協働相手でしょう。楽譜と脚本それぞれの解釈が舞台上でどのように交わり、融合していくのか——見届けずにはいられない、魅力的な試みです。
上演言語|日本語
字幕|ドイツ語、英語
公演概要
ウィーン芸術週間 / Wiener Festwochen *世界初演
日程|2023年5月13日(土)〜15日(月)
日時|
2023年
5月13日(土) 20:30
5月14日(日) 20:30
5月15日(月) 20:30
会場|Halle G im MuseumsQuartier
詳細|https://www.festwochen.at/en/verwandlung-eines-wohnzimmers
ヘレンハウゼン芸術祭 / KunstFestSpiele Herrenhausen
日程|2023年5月19日(金)〜20日(土)
日時|
2023年
5月19日(金) 19:30
5月20日(土) 19:30
会場|DHC Halle Hannover
詳細|https://kunstfestspiele.de/programm/veranstaltungen.html#./programm/veranstaltungen/details/verwandlung-eines-wohnzimmers.html
オランダ・フェスティバル / Holland Festival
日程|2023年6月7日(水)〜8日(木)
日時|
2023年
6月7日(水) 20:30
6月8日(木) 20:30
会場|Muziekgebouw aan 't IJ
詳細|https://hollandfestival.nl/en/ribingurumu-no-metamorufuoshisu
巡回先スケジュール
クレジット
作・演出:岡田利規
作曲:藤倉大
出演:青柳いづみ、朝倉千恵子、大村わたる、川﨑麻里子、椎橋綾那、矢澤誠
演奏:クラングフォルム・ウィーン (Lorelei Dowling, Jacobo Hernandez Enriquez, Benedikt Leitner,
Florian Müller, Dimitrios Polisoidis, Sophie Schafleitner, Bernhard Zachhuber)
音響:白石安紀、石丸耕一
照明:髙田政義(RYU)
衣裳:藤谷香子(FAIFAI)
美術:dot architects
ドラマトゥルク:横堀応彦
テクニカルアドバイザー:川上大二郎(スケラボ)
技術監督:守山真利恵
舞台監督:湯山千景
音響オペレーター:遠藤剛、松葉燎真(MRD)
照明オペレーター(ウィーン、ハノーファー公演):葭田野浩介(RYU)
舞台監督助手(アムステルダム公演):松嶋柚子・堤田祐史
クリエーションワークショップ:アンサンブル・ノマド(演奏)、辻本達也(カヴァー)、永見竜生[Nagie](サウンドデザイン)
プロデューサー:水野恵美(precog) 、黄木多美子(precog)
クリエイティブ・アドバイザー:山口真樹子
プロダクションマネージャー:武田侑子
ツアーマネージャー(アムステルダム公演):堀朝美
アシスタントプロダクションマネージャー:遠藤七海、平野みなの
英語翻訳:アヤ・オガワ
ドイツ語翻訳:アンドレアス・レーゲルスベルガー
宣伝美術:岡﨑真理子(REFLECTA, Inc.)
委嘱: Wiener Festwochen
製作:Wiener Festwochen、一般社団法人チェルフィッチュ
共同製作:KunstFestSpiele Herrenhausen、Holland Festival、愛知県芸術劇場
企画制作:株式会社precog
エグゼクティブプロデューサー:中村茜
アドミニストレーションディレクター:斉藤友理
アドミニストレーション・オフィサー:平岡久美
プロジェクトアシスタント:村上瑛真
協力:オフィススリーアイズ、KAJIMOTO、株式会社キューブ、ナカゴー、急な坂スタジオ、山吹ファクトリー、公益財団法人セゾン文化財団、d&b audiotechnik GmbH & Co. KG.
助成:(ウィーン公演)公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
(ウィーン、ハノーファー公演)文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(国際芸術交流支援))|独立行政法人日本芸術文化振興会、公益財団法人野村財団
(アムステルダム公演)独立行政法人国際交流基金
本公演のワークインプログレス公演は令和3年度独立行政法人国際交流基金 舞台芸術国際共同制作事業として制作されました。
詳細:https://chelfitsch.net/activity/2021/10/chel-fujikura-wip.html
ワークインプログレス公演 初演/共同制作:独立行政法人国際交流基金、一般社団法人チェルフィッチュ