光州公演より Photo Myungsang Yoo
現実か虚構か。現在か過去か。存在か不在か。映像か演劇か。あるいはまだ見ぬ何かか——。
作・演出 岡田利規
映像 山田晋平
出演 足立智充、椎橋綾那、 Jeong Jung-yeop
作品概要
スクリーンなどに投影された等身大の役者の映像と観客の想像力によって「演劇」を立ち上げる〈映像演劇〉。これまでは美術館や展示スペースで上演/展示をしてきた同シリーズだが、2022年3月に穂の国とよはし芸術劇場プラットで上演された『階層』では奈落と客席という劇場の機構を利用した上演/展示で劇場に進出。『ニュー・イリュージョン』ではさらに、舞台と客席という通常の演劇の形式を踏襲し、劇場空間で〈映像演劇〉を「上演」する。舞台の上に立つ一対のスクリーンに映し出された男女は、昨日までその劇場で上演されていたという、かつて二人が暮らした部屋を舞台にした演劇について語り出す。
だが、そこで語られているのは演劇=虚構の話かそれとも二人の生活=現実の話か。スクリーンに映し出される虚構の空間と劇場という現実の空間もまた互いを侵食し、ふとした瞬間、そこにはいないはずの俳優の気配が——。舞台の上に現実と虚構、現在と過去、存在と不在が折り重なり、騙し絵のように様相を変えていく。〈映像演劇〉の新たなイリュージョンはその間隙から姿を現わすだろう。
『ニュー・イリュージョン』上演によせて ーーー 岡田利規
演劇は、上演空間に実在していないものを想像のレベルにおいて存在せしめることの可能な形式です。すなわち演劇では、イリュージョンを出現させることができます。その演劇におけるイリュージョンは、ときにそこに実在すると言ってしまって差し支えないほどに確かなものとなり得ます。それがその上演に立ち会う人たちが共同で体験するイリュージョンだからです。
わたしたちチェルフィッチュは近年〈映像演劇〉という特殊な形式の演劇に取り組んでいます。〈映像演劇〉では、俳優の演技を撮影した映像が等身大サイズで投影される空間が上演空間になります。その上演空間に、投影された映像を通してイリュージョンが出現するのです。
映像に映り込んでいるものも、それが投影される上演空間の中に実在しているわけではないという意味ではイリュージョンです。けれども〈映像演劇〉におけるイリュージョンとはそれだけではありません。映像の中の俳優の演技によって生み出される演劇的イリュージョン――つまりイリュージョンが生み出すイリュージョン――が、〈映像演劇〉によって出現するイリュージョンです。
わたしはこれまでの〈映像演劇〉の実践を通して、この世界の何が現実であり何がイリュージョンであるのかを自分が正しく識別できている自信がまったくない、と自信を持って言うことができるようになりました。この、現時点での〈映像演劇〉の最新作「ニュー・イリュージョン」を体験したら、あなたにもそうなってもらえるかもしれません。
上演時間|約60分
上演言語|日本語
字幕|英語
公演概要
Singapore International Festival of Arts
日程|2023年6月3日(土)〜6月4日(日)
日時|
2023年
6月3日(土) 14:00 / 17:00
6月4日(日)14:00 / 17:00
会場|SOTA Studio Theatre
詳細|https://sifa.sg/creation/creation-details/international/new-illusion
EIZO-Theater Workshop with Shimpei Yamada
日時|2023年6月1日(木) 14:00〜17:00
会場|Aliwal Arts Centre, Multi-Purpose Hall
参加費|$38
予約・詳細|https://www.sifa.sg/workshops/workshop-details/eizo-theater-workshop-with-shimpei-yamada
巡回先スケジュール
クレジット
作・演出 岡田利規
映像 山田晋平
出演 足立智充、椎橋綾那、 Jeong Jung-yeop
音楽 Jang Young-gyu
録音・音響 中原楽(Luftzug)
照明 髙田政義(RYU)、葭田野浩介(RYU)
衣裳 藤谷香子(FAIFAI)
舞台監督 川上大二郎、守山真利恵
録音 佐藤佑樹、株式会社 大城音響事務所
映像アシスタント 齊藤詩織(青空)、樋口勇輝(青空)
通訳 イ・ナウォン
英語字幕 アヤ・オガワ
韓国語字幕 イ・ホンイ
プロデューサー:水野恵美(precog)
プロダクションマネージャー:遠藤七海
アシスタントプロダクションマネージャー:村上瑛真(precog)
制作デスク:斉藤友理、平岡久美(precog)
(シンガポール公演)
照明 長坂有紗(RYU)
委嘱 Ob/Scene Festival
製作 一般社団法人チェルフィッチュ
企画制作 株式会社precog
助成 公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
協力 公益財団法人セゾン文化財団、空 、オフィススリーアイズ
本作は、2022 ACC (Asia Culture Center) International Co-production Performing Arts Development Program によって制作されました。